【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
しかし病院の前も中もすごい数の警察官。
VIPの人でも入院しているのかな。
まさか五郎ちゃんだけでこんなにって事ないよね。
だって抗争なわけじゃないんだもの。
すれ違う警察官をチラチラと見ながら病室の中へ入ると五郎ちゃんはまだ戻っていない。
隼たちの方へ足を進めているとカタカタと音がして五郎ちゃんが戻ってきた。
顔には酸素マスクがついたままで痛々しい。
また大きな掛け声でベッドへと移動すると
仰向けになれない五郎ちゃんは横向きだ。
血圧や点滴などの処置が終わると看護婦さんたちは病室を出て行った。
「ほら、行ってやれ」
隼が私の背中を押してくれたから五郎ちゃんの枕元に行き顔のあたりでしゃがむと
「五郎ちゃん」
小さい声で名前を呼んだ。
「四郎、おったとね。またえらく小さくなっとるとね」
「ちっさい言った?」
「言うとらん言うとらんよ」
掠れた声で応えてくれる五郎ちゃんに涙が出た。
大きくて重たい手が私の頭の上にズッシリとのり
「心配かけたばい」
「私は平気と~。でもさぶちゃんが心配しとーとよ。さっき電話で大丈夫言うといたばい」
五郎ちゃんの真似をしながら話す私に薄らと笑い
「そうか。ありがとうな」
「よかよ。五郎ちゃんの面倒は任せてって言うといたばい。いい玩具が出来て嬉しいとよ」
頭の上の重たい手を両手で挟んで私の頬にあてると少しゆっくり眠るように話した。
暫くはきっと身動き出来ないから話しするしかないよってまだ意識が朦朧としている様子の五郎ちゃんに伝えた。