【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
しかし生まれ育つとは凄い。
私があんなにも苦戦し神のように思えた梅野さんがつけてくれた案内の印。
それは今でも私にとって有難い思いでになっているが菫は迷うことすらない。
今でこそ私も自由自在に屋敷の中を動くことが出来るがあの頃は組員さんの手をどれだけ煩わせたか…。
有難い思い出には恥ずかしさも含まれる。
食堂へ近づくと菫のご機嫌な声が聞こえてきた。
組員さんたちも何人もいるようで賑やかだ。
「渡辺さんいつもすみません」
「いや、何あっしらにとっても楽しみな時間なんでごぜぇやすよ」
「そうでごぜぇやしょ」
「こら菫!」
怒る私とは反対に組員さんたちは大笑いだ。
「結衣さんどうかいたしやしたか」
三浦さんも食堂へと入ってきた。
その姿を見ると菫は立ち上がり
「ママは三浦さんに面倒見てもらって」
「面倒って菫…」
「菫ちゃんの方が手がかからず心配もありやせん」
「もう三浦さんまで」
組員さんたちに笑われながら私は菫たちの座るテーブルの横へ三浦さんと渡辺さんと一緒に座りお茶を入れた。