【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
「菫は、絶対に着なさそうだよな」
「年頃になったらわからないよ」
「買ってやるのが楽しみだ」
「出かけてくれるといいね」
なんだよそれと言いながらもそんな日を待ちわびる。
両手に抱えるほどのショップバッグ。
当然のように隼が持って左手は私の手をしっかりと握る。
隼の服も選びまたもたくさんのショップバッグ。
「これは私がお持ちしましょう」
ズルズルと肩にかけやっぱり右手は隼の左手に。
車に戻りイルミネーションの並ぶ通りで降ろしてもらうと
ここで高野さんともお別れをした。
「綺麗ね」
「冬に見るから綺麗なんだよな」
「不思議よね」
それは澄んだ空気のせいか
吐き出す白い息がそう思わせるのか
きっと寄り添う温かさを感じるからだと隣の隼を見上げてはキュンッとする。
暫く通りを歩いているとお洒落な外観のレストラン。
「綺麗なとこね」
隼について店内に入ると
「社長」
隼をそう呼び会釈をすると席へと案内された。
「社長って言った?」
「ここ、うちがやってる。子どもたちのためだ」
隼は吹き出していた。
菫が幼稚園に入る時の隼の勤務先はここを書いたそうだ。
「じゃあ私は今、姐さんじゃなくて社長夫人?」
コソッと囁くと隼も笑う。
私のスキなものを食べられるところと考えていたら
自分のとこでシーフードフェアをやっている事に気づいたらしい。