【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
「牡蠣スキだろ」
「うん。生牡蠣最高」
メニューを見る事もなく白ワインとともにいろいろな産地の生牡蠣が並ぶ。
グラスをカチンと合わせ
「食べていい?」
「好きなだけ食え」
それではお言葉に甘えてとレモンを絞って口の中へ。
「美味しい」
ワインを飲みながら私の顔を見て微笑む隼。
あれも美味しいこれも美味しいと私も笑顔が止まらない。
オーブン焼きも大満足。
伊勢海老が出てくればエビエビと喜び
カニが出てくればカニカニとはしゃぎ
次々出てくる素材に変身するかのごとくに楽しんだ。
「もう海中で暮らしてる気分よ。乙姫と呼んで」
さっき知ったばかりの社長夫人などとうに記憶の中から消えている
「結衣は肉より魚の方がスキだよな」
「だからちっさいって?」
「言ってねぇよ」
鼻で笑いながら自分たちはこういう時間も持つことがあまりに少なかったと申し訳なさそうな顔を見せる。
「こういう時間って二人の間を深める為のものでしょ?だったら私達には必要なかったって事だと思う。もっといい時間がたくさんあったもの」
私の答えが大変満足いくものだったようで隼のデザートまで私にくれた。