【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
おかしい。
絶対におかしい。
急いで踵を返すと小走りで響さんの後を追った。
「パパ!パパ」
「結衣どうした?」
パパの様子はまったくいつもと変わらない。
何が起きても響さんの様子は変わらないから余計に不安だ。
「隼じゃなくて司でしょ。司に何かあったでしょ」
「ん?どうした」
「絶対おかしい。いつも何かあれば家にいろって連絡してくるわ。考えてみたら今日は司から連絡が来てない」
「たまたまだろ」
私の思いすごしだろうか。
さんざん言われているだろうと義務でもない司が連絡しない事があるかもしれない。
それでも変な胸騒ぎがして気になりだすとどうにも止まらない。
「司に何があったの?」
響さんのスーツを掴み
「教えて!」
そう紡いだ時には涙が零れた。
零れ落ちる涙を響さんが親指でふき取りながら
「明日実ちゃんは無事だ。怪我もない。ただ司が警察に拘留されてる」
「なんで。司が犯人じゃないのにどうして」
「犯人をボコボコにしちまったからな」
「だって悪い人でしょ」
「それでもだ」
「堅気だって明日実さんを誘拐したんだから悪い人じゃない。どれだけ怖い思いをしたと思ってるの。警察に行ってくる」
走り出そうとすると響さんの大きな手が素早く私を捕まえた。