【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
司にも怪我がない事を伝えると安心したと言いながら間違っても怪我するとは思ってないとも言って笑っている。
拘留されている事も驚くほど気にもとめていないというか事のなりゆきからいって当然だと捉えている。
それよりもどのぐらい相手を殴りつけてくれたかって方が気になるらしく組員さんが止めなかったらあの世行きだと隼に聞いたまま伝えた。
「当然だよね」
明日実さんのその言葉には本気で驚いた。
「だって私が死ぬかもしれなかったのよ」
「それはそうだけど死んじゃったら司が殺人犯になっちゃう」
「若もそんなやつの為に務所入るほど暇じゃないから考えてるよ」
こういう時の感覚は正直なところ今でもついていけない。
極道が嫌いだと言っている明日実さんでも私よりもずっと極道の女だ。
それでも怒りを口にしている間は気が紛れても恐怖心は心の中に残っているだろう。
「これから警察に事情聴取」
その言葉で私の時にはそれがなかった事に気が付いた。
「私の時…なかったな。密かに示談だったのかも」
「あぁ」
明日実さんは笑いながら
「警察の世話にならずに解決したってこと。今回は、私が連れ去られるところを同僚が見ていたからね。極道の小競り合いじゃないって事を他の組のもんに知らせる為にわざわざあいつらに救急車まで呼んだのよ」
もうその先は聞いても私の感覚では疑問だらけになりそうだった。
それでも小競り合いではないと知らせる必要があるほどあちこちで小さな火種が起きている事だけは改めて認識した。
それから不安になったり何かあったら話し相手ぐらいにはなれるからいつでも連絡してと明日実さんに伝え電話を切った。