【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち


琉を抱いてボスたちのところへ行こうと廊下を歩いていると植木さんに会った。


「坊ちゃん」


またも眉尻を下げて琉に両手を差し出した。


琉は嬉しさからか興奮気味で迷うことなく植木さんの方へ両手を伸ばし抱かさった。


見事に飼いならされていると思わず口元が緩んでしまう。


「明日実さんこれから事情聴取なんですって」


植木さんは琉をあやしながら


「そうでごぜぇやしょうね。龍崎の若も一緒にお戻りになられるんじゃないですかね」


「ほんとに?良かった」


「誰よりも結衣さんが心配なさって龍崎の若が知ったら喜びやすよ」


「みんなが心配しなさすぎなんですよ」


植木さんは琉の耳をそっと塞ぐような仕草をしながら


「今でこそ少なくなりやしたが昔はそりゃもう年がら年中誰かが入ってやしたからね」


思わず目を見開いた私の前で悪い事をしたらお巡りさんに捕まるんだと琉に話しかけているが


さすがの植木さんでもその言葉は説得力に欠ける気がして可笑しい。


「植木さんがそれ言いますか」


「極道だって善悪ぐらいありやすよ」


「確かにそうですね」


「そうですよ。ちーとばかり堅気とはルールが違うってぐらいでごぜぇやすよ」


やっぱり植木さんは私よりも何枚も上手だった。




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