【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
菫の時は、誰もが菫ちゃんとかすーちゃんと言ったのに琉はこんなにも小さいのに「坊ちゃん」と呼ぶ。
「坊ちゃんじゃなくて琉」
何度となく言うけれど植木さんも
「坊ちゃん」と呼ぶ。
これじゃ琉にお名前は?と聞いたら
「坊ちゃん」と答えるんじゃないかと思う。
そして、菫の時ほどむやみやたらと抱かないというか緊張の顔を見せる。
「いや、全然いいんだから」
私がポンッと組員さんの腕の中へ琉を抱かせても
ものすごい姿勢を正して緊張して抱いている。
「ただの小僧だよ?遊んであげてくださいよ」
逆に頭を下げてお願いしてしまうぐらいだ。
それもとても困るようで
「ゆ…結衣さんやめておくんなせぇ」なんて言うんだけれど
これじゃあ琉は菫との差別を感じてしまう気がして私は心配で堪らない。
「三浦さーん」
三浦さんに琉を抱いてもらうと
「琉坊ちゃん」と辛うじて名前はつくがやっぱり坊ちゃんがつく。
「ねぇ…坊ちゃんやめてくださいよ」
「やめて下さいと言われても…」
「琉ちゃんとか琉くんでいいんです。母親の私が言うんです」
三浦さんの腕にしがみついてお願いしている私に植木さんが笑いながら
「それじゃぁ三浦が他の組長たちに叱られてしまいやすよ」
「なんでですか。琉はまだ極道じゃないんですよ」
「そうでごぜぇやすね。それでもあっし達にとっては大切な坊ちゃんなんでごぜぇやすよ。菫ちゃんもそりゃ大事に決まってますがね、あっし達極道にとっちゃ琉坊ちゃんは未来なんでごぜぇやすよ」
この口論は平行線だ。