【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
環境と経験値
わたしと由香里さんが笑いに包まれているところへテーブルの上の携帯が鳴り響いた。
画面をチラッと見た由香里さんの眉間に小さな皺が寄ったのを私は見逃さなかった。
以前と違って極道らしき行いというか
極道である事を思い知るような出来事を私には黙っているという事はあまりなくなったように思う。
現に今もチラッと私の顔を見た由香里さんが頷いてから携帯を耳にあてた。
「そう。わかったわ。ご苦労さん」
少しのやりとりのあと由香里さんは電話を切った。
そしてため息をつくと
「極道って温和な人間の集まりじゃないからね」
いやそうだろう。
どっちかっていうと短気というか血気盛んな人間の集まりなんだと思う。
その人間の統率を図るというのはどれほど大変な事だろう。
「要領のいいやつや狡賢しさで生き延びるやつもいる。それも極道には必要」
「わたしは不器用な男じゃけんって人がいいわ」
「結衣…」
由香里さんはクスクスと笑いはじめた。
私の頭の中に浮かんだ人を由香里さんはすぐにわかったのだろう。
そして、私が選んだ男も決して器用な生き方をする男ではない。