夏色かき氷【短編集】
応援電波
「はぁ……」
部室に着くなり、私はため息をもらした。
先日の大会で取り返しのつかないミスをしてから、部活での私の立場は危ういものになってしまった。
仕方ないよ。運が悪かったんだって。あなたのせいじゃないよ。部活仲間や顧問のセリフを思い出し、ますます憂鬱になる。皆、言ってることと目付きが違う。
大会でミスをする直前まで、皆は、私に期待をしていた。あなたなら絶対、ウチの高校を有名校にしてくれる!と。うぬぼれなんかじゃない。私も、期待を裏切るつもりはなかったし、輝かしい活動記録を更新する気だった。なのに、現実はそうはならなくて。
部室を抜け出し、私はスマホ片手にトイレの個室に駆け込んだ。
急いでメールを打つ。顧問が来る前に。
《助けて~。部活やめたい。頑張って部室行ったけど、明らかに空気重いし。無言で責められてるみたい。私が部室入った瞬間、みんなシーンとなるし、ホントやだ》
弱音。グチ。本音。悲しみ。潰れそうになる気持ちで、私はそんなメールを送った。相手は、ホームページサイトで知り合ったタメの女の子。お互いに顔写真も交換してるし、ケータイで何度か話したこともある。
このコだけは、私の気持ちを分かってくれた。つらい気持ちに共感してくれるし、励ましてもくれる。会ったことはないけどいつか会いたいと思うくらい、大好きな女友達だ。彼女は音楽科のコらしく、毎日ピアノ漬けだと言っていた。
《大丈夫?それはつらいよね。嫌な空気って、向こうが隠してもこっちには伝わるしね…。私もこの前、ピアノの授業中に何度も同じようなことで注意されてさ、さすがにピアノ嫌になりかけたよ。でも、失敗しない人なんて絶対いないしさ。好きで始めたことだから辞めたら後悔しそうと思って、何とか耐えてるよ。一緒にがんばろう♪うちらは一人じゃないしっ!!ね!?》
彼女からのメールを見て、不思議なくらい元気が出た。暗い気分も吹き飛んでる。大丈夫。私も、まだまだがんばれる!
このコと同じ学校だったら良かったな~って夢みたいなことを考えながら、私は部室に戻った。
重たい扉を開いたら、さっきまでとは違う、キラキラした私の日常がそこにあった。