掌編小説
ふわり。
目の前を通った白いものに気付き、空をみあげる。
「あ、雪…」
どうりで寒いはず。
薄い生地のワンピースに、はだし。
まわりを見回すと暖かそうな光がどの家からも溢れている。
光とともに溢れてくる賑やかな音。
きらびやかなイルミネーションに目を奪われる。
「あったかいんだろうな…
いいな。…」
呟いた独り言は白い息とともに空に消えていった。
明るい道をそれ、細く暗い道に入り、小だかい丘に登ると見えてくる家。
「ただいまー。」
「ねぇちゃん、おかえりー!」
「おかえりなさい。
寒かったでしょう。
今日は奮発したのよ。
ほら。温かいスープ。
飲んで暖まりなさい。」
「スープだよー!
お野菜はいってんだ!!
あったかくなるよー!」
「わぁ、ありがとう。」
母のお皿には私よりはるかに少ない量のスープ。
「…お母さん、足りるの?」
「お母さんは大丈夫だから食べなさい。」
「ありがとう。」
パンとスープの夜ご飯を終え、外に出て街を見下ろす。
街はやっぱり色とりどりの光でみちている。
「ねぇちゃん。
サンタさんって煙突からはいってくるんでしょ?」
「うん、そうだよ。
でも、いい子にしてないとこないよ。」
「僕、いい子だから大丈夫!」
「ならきっと、来てくれるね。」
「うん!」
夜、眠る前に空を見上げ祈る。
…神様、もう少しだけ、良い生活ができませんか?
…母と弟だけでも暖かくすごせませんか?
薄い布団に入り、皆で寄り添って眠る。
いつか自分の思いが空に届くことを願いながら。
外ではふわりふわりと、雪が舞っていた。
ーENDー