掌編小説
一つにまとめてお団子にした頭の上には輝くティアラ。
トウシューズのひもをいつもより丁寧に、心をこめて足首にまいていく。
立ち上がり、すうっと深呼吸。
軽やかな、けれどどこか物悲しい音楽が流れはじめる。
軽く、静かに舞台へ出る。
回転と同時にふわりと広がる柔らかなスカート。
もう私は人間ではない。
主人公の叶わない恋を想い、舞う。
パ・ド・シャ 軽やかに。
アラベスク 静止。
ピルエット 鮮やかに。
優しく、切なく。
悲しみに沈む主人公に優しく降り注ぐ。
主人公の気持ちに優しく寄り添う。
アップテンポの部分では表情も明るく。
軽く、楽しく。
ダウンテンポの部分では切なく。
柔らかく、静かに。
優しく、切なく、淡く。
ーENDー