籠のなかの小鳥は
朝政の散会後、小鳥のいる常寧殿で昼餉でもと考えたが、そんな和やかな気分にはなれなかった。


宮中の宿直所では、話をするにもなにかと差し障りがある。
というわけで、ここ蘇芳の私邸に戻り二人で昼餉の膳をかこんでいる。

ちなみに昴は宮中に宿直するために残り、青波は目当ての女性のところへと、それぞれ別れていった。


都の三条にある広壮な邸は、蘇芳の生家であり、祖父太政大臣亡きあとは彼の所領になった。


廂(ひさし)の間に茵を敷いて、昼餉の座とした。

格子をあげて御簾を巻き上げ、広大な庭園を眺めわたす趣向だ。

手入れのゆきとどいた前栽に、季節の花が彩りをそえている。橋のかかる池には、満々と水がたたえられている。


そんな景色も、二人の心を晴れやかにはしてくれない。
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