籠のなかの小鳥は
詭弁だ、蘇芳が憮然としながら、菜のものを口に放りこむ。


「まあ、そうたやすく政権をくつがえせるとは、左大臣殿も思っておられないでしょう。
彼の望みはつまるところ、権力を我が手に握ることですから。
一の姫は上皇に嫁がせ、二の姫は今上帝に嫁がせ、三の姫は次の東宮に嫁がせるおつもりのようだ」


「あの男に似た、かぼちゃに目鼻をつけたような娘など、いらんわ。そのへんの大根が似合いだ」


「かぼちゃかどうかは知りませんが、わたしもいただく気はありませんねぇ」
珀斗が汁碗を手にして、一口すする。

そういえば、と椀を膳におく。
「さきごろ近衛の大将殿のところにお生まれになった男子は、番をもっておられるとのこと」


それはめでたいな、と蘇芳も声をはずませる。

「早蕨はよい番だ。似れば先が楽しみだ」
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