籠のなかの小鳥は
一瞬大きく目を見開いた珀斗は、やわらかな笑みを口元に浮かべた。

「太陽には太陽の、月には月の役目があると思われませんか」


太陽には太陽の、月には月の———

ときに苛烈なまでに光と熱を放ちながら、すべては、人も世もそれを中心に回っている、太陽。
誰のことを指しているのか分かる気がする。


あ、ほれ噂をすれば、と珀斗が視線をふりむける。

迷いのない大股の足音。前触れの声を聞くまでもない。


おい珀斗! とさっそく声をあげる。緋の狩衣は、夜目にも鮮やかだ。
「二人で先に始めているのか」

ええ、皇女がぜひにと仰せでしてね、ぬけぬけと答える。

「なんだと」じろりと小鳥をねめつける。

「ち、違・・・っ」あわてて両の手を胸の前で振る。


俺の隣に座れ、と座していた茵をぐいと引かれて、思わずのけぞる。
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