籠のなかの小鳥は
「騒がしいことだな」
久しく聞いていなかった声が耳にふれる。

顔を上げれば、夜と同じ色の直衣をまとった昴の姿。あの落雷事件以来だ。


「黒の宮様!」
思わず立ち上がって駆け出す。はしたないと思われようと、止められない。
感動の再会、のはずが・・・
「きゃっ」がくんと、後ろから引っぱられたようにその足が止まる。

振り向くと、表衣のすそを蘇芳がしっかり踏んづけている。

「お、お離しください」
言いながら、すそを引っぱり出そうと身体をひねる。


「心配をかけたようだな」

動けずにいる小鳥にかわって、近づいてきた昴が小鳥の手をとった。
口数の少なさは相変わらずだ。


「なんとお礼を申し上げたら・・・きゃっ!」

立ち上がった蘇芳に背後から抱き寄せられて、言葉は宙に飛んでいった。

おい、さっさと酒を持ってこい、蘇芳の言葉に御簾のむこうで女房たちが慌ただしく動く。

ちなみにお酒は二十歳になってから・・・ではなく、元服を迎えていれば大人の一員としてたしなむことができる。裳着を終えた小鳥もしかり、である。
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