籠のなかの小鳥は
じりじりしながら待ったが、珀斗の訪いはなく、丁重な返しの文だけが届けられた。


蘇芳は私邸で快復に努めていることが記されていた。
彼が朝政に出席できないので、その責務を三人で果たしており、議事も多くなかなかそちらへ顔を出せず申し訳ない、といった内容だった。


少しは胸のつかえが去ったものの、完全にとはいかない。

小鳥の知る平安時代より、化学が発達しているとはいえ、最新テクノロジーにはほど遠い。


胸を病んで亡くなったという撫子の姫の話が、頭をよぎる。
結核か肺炎か、どんな病気か分からないけれど、現代医療があれば助かっただろうに。

都合のいいときだけ、元いた世界を懐かしんでしまう。



姫様、もうよろしいのですか、かづらが夕餉の膳を見て、気遣わしげに声をかける。

「えぇ・・・食欲がなくて・・・」

半分も手をつけられていない膳が下げられてゆく。


なぜこんなに胸ふさがるのか———自分に問うてみる。

昴のときは、宮中にあり日々彼の容態を知ることができた。
命にかかわるものではなく、順調に快方に向かっている安心感があったけれど、今は———・・・
< 154 / 247 >

この作品をシェア

pagetop