籠のなかの小鳥は
大膳職の大夫は這いつくばり、
「こたびの不祥事、罪と咎はすべて私めにございます。どうか首を刎ねるのは、私め一人に———」


罪も咎も、毒を盛った者と、それを命じた者にある。そなたや他の者たちを罰する道理はない。
珀斗はそう告げた。
「他言は無用」とだけ念押しして。




「———さて、黒幕は誰か」
青波が一同を見回す。


蘇芳を、ひいては日嗣の皇子を殺めようとする者、と珀斗がつぶやく。


「すぐに浮かぶのは、肉付きのいいどこぞの大臣だがな」
昴が応える。


「たしかに動機はありましょう。が、いかに臣下第一の者といっても、臣下は臣下。
娘が後宮におりますが、蘇芳に毒を盛らせるほどのことができるかどうか———」
珀斗が思案げに首をかしげる。


「それに、意宇(おう)の毒は、代々禁中に伝わる暗殺の道具だしね。精製法は秘中の秘とされて———」


青波、と蘇芳がその言葉をさえぎる。
「それ以上は言うな」

斬りつけるような凄みのある眼光。


座に、しばし沈黙が落ちた。
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