籠のなかの小鳥は
僕たちの、と青波がぽつりとつぶやく。
「僕たちの姫君に危険はないのかな?」


小鳥の話題になると、なんとはなしに場がなごむと分かっての発言でもある。


「皇女はおそろしく鋭いお方です。隠していても、なにか勘づいておいででしょうね」


「籠の中にでも、込めておければよいものを」
ひとり言のように昴が口にした。


「あいつにも、たよりないが羽がある。羽がありながら飛ぶことを許されないのは、死に等しい」


異母兄の言葉に、めずらしく昴は反論しなかった。


「皇女といえば、左大臣殿は皇女の皇籍にまで異をとなえているようで。
どこの馬の骨かわからぬ者をと」


ばかな、と蘇芳が語気を強める。
「あいつの肩に乗っているのが、そこいらの椋鳥や山鳩とちがうことぐらい、誰が見てもわかるだろう」


「彼の目的は我らが一族の権威の失墜にあるわけですから。理由はなんでもよいのです」


「あいつにそこまでのことができるわけなかろう」
昴が腕を組んで言う。
< 183 / 247 >

この作品をシェア

pagetop