籠のなかの小鳥は
青龍は、春。まさしく青春だ。

朱雀は、夏。朱夏という言葉を聞いたことがあるような。
夏はだから、蘇芳の季(とき)なのだ。


白虎は、秋。雪のイメージがあるから、白は冬なのかと思いきや、秋だった。
そういえば、北原白秋という詩人がいた。

そして玄武は、冬。玄冬である。黒く凍てつく大地を思わせる。


今は朱い夏。太陽が燃えれば燃えるほど、彼も活力がみなぎるのだろうか。

そう考えると、この暑さもそうつらく感じなくなるから不思議だ。


こうして狩衣をまとう彼のかたわらにいられることが、ただただ嬉しい。

この人のかたわらに・・・そんな想いから、なんの気なしに口にする。


「宮様は、武芸や馬がお得意と聞いております。わたしもいつか馬に乗れたら、と思っています」
乗馬の経験はないけれど、乗るなら牛車より馬がいいなぁと思う。


蘇芳がしばし黙したのち、胡乱げな目を向けてくる。

「お前が元いた国では、女が剣や弓や馬をたしなむのか」


少し考えて、はい、とうなづく。
「わたしは経験がないのですが」

通っていた高校には女子の剣道部があった。弓道も馬術も、女子が行なえる競技だ。かっこいい、と言われることはあっても、眉をひそめられることはないだろう。
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