籠のなかの小鳥は
なんの意味がある、と鋭く蘇芳が問う。

小鳥の手をつかんで引き寄せる。

「いかにお前が、女の身としては並外れて健やかとはいえ、女は女だ。
こんな小さな手で、剣や弓を使ったところで、男に敵うわけがない。なんの意味があるんだ」


意味———意味など考えたこともなかった。
ただそれが、 “あたり前” だったから。勉強もスポーツもやるのがあたり前のことだった。


「わたしは・・・」

なかなか思考を言語化できない。もともと器用に言葉を操れる性質ではない。

蘇芳はじっと待っている。言うのだ、自分の言葉で。どんなに拙くとも。


「・・・赤の宮様ほど速くなくとも、足があるのなら自分の足で歩きたいと思います。
白の宮様ほど賢くなくとも、自分の頭で考えることに意味があると思うのです」


朱雀のように飛べなくとも、やああって蘇芳が口をひらく。
「お前にも羽があるのだったな」
そう言って、小鳥を抱き寄せる。


はい、とうなづく。


それでも、と蘇芳は続けた。
「お前がおとなしくこの腕におさまる女だったら、と思わないでもないがな」
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