籠のなかの小鳥は
赤の宮様———


気づけば、日は中天からだいぶん西に傾いている。


皇女様、と御簾のむこうから、弼(たすく)が呼ぶ。
宮中から迎えが来たのだろう。


「宮様、そろそろ辞さねばなりません」
蘇芳の腕のなかで、小鳥はつぶやく。


なぜだ、憮然とした声が返ってきた。


「・・・迎えが参りました」
もぞもぞと身じろぐが、蘇芳の腕の力はいっそう強くなる。


「ずっとここにいればいい」

「また常寧殿にお渡りいただければ、いくらでもお会いできます」

小鳥も焦ってきた。彼の性格上、なんとなく予想できたことではあるけれど。


「離さん」
まるで聞く耳をもたない。


蘇芳様・・・弼の声にも焦りがにじむ。


「・・ぁ・・!」

ぼぅと周囲に広がるまばゆい橙色の光。蘇芳に抱かれたまま、体が浮かび上がる。

朱雀・・・

気づけば蘇芳と、朱雀に乗っている。
巨大な朱き鳥が、大きく羽を広げ、地を蹴り、はばたいた。
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