籠のなかの小鳥は
「誰かあるか!」
「警備の者を!」

大声で呼ばわる者、腰を浮かせ逃げ出そうとする者。
大極楽殿は恐慌状態におちいった。


静まれ!

その声が、ぴしりと鞭のように空気を打つ。

扉から入ってきたのは、四人の皇子だ。

その姿の常との違いに、誰もが瞠目する。四人は皆、腰に剣を佩いているのだ。


「こ、これは・・」
立ち上がって声を上げたのは、左大臣だ。

「これは皇子様方の仕業にござりますか」


いかにも、と蘇芳。
「こやつらは先頃、朱雀と青龍にて捕らえた諸碍の先兵。敵情視察の任を負っていた者たちだ」


「内裏に血の穢れを持ちこまれるとは、由々しき事態」
左大臣が肉のたるんだあごを震わせる。


「このまま無策のまま座しておれば、内裏中が血に染まるであろう」
昴が重く告げる。


皇子たちの登場に、ひとまず危険がないことを察して、一同はまた座に戻る。
かたずを飲んで、場のやりとりを見つめている。

帝はといえば、高御座からずり落ちてほうけたままだ。
< 205 / 247 >

この作品をシェア

pagetop