籠のなかの小鳥は
「己が目と耳で確かめるがよい」

蘇芳が歩を進めると、板の間に転がる諸碍の一人を足蹴にする。

「この者は諸碍の一隊の首領。大和言葉もある程度解する」

蘇芳は腰の剣を抜くと、諸碍の口をふさいでいるさるぐつわを切って落とした。


「問われたことに正直に答えよ。舌を噛んで死のうとしたり、空言を口にすれば、お前ではなくお前の手下を替わりに切り刻む」

諸碍がわずかに首を縦に動かす。


「我が軍の情報を、お前たちに流している者は、誰だ?」


大極楽殿が水を打ったように静まりかえる。かすかな、針を倒すような音でも響くほどに。



ペッ!
諸碍が血のまじった唾を吐いた。白木の床にべとりとのびる。

「———憐れなものだな」
ゆるゆると口から言葉が吐かれる。

床に転がされたまま、眼だけを動かし高御座を見やる。

「あそこにおる者、あれよりさらに奥に、さらに高みにいる者によって、国が内部から腐り落ちようとしているというのに・・・」

言って顔を歪ませる。見ようによっては笑みにもとれる不気味な表情。
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