籠のなかの小鳥は
「違う、それは違うのだ」
院がうなるように言葉を発する。死に瀕した獣が最後の力をふりしぼるがごとき声。
「この国は滅ぶ。我が一族とともに。滅ぶならば、我が手で終わらせる」
「なぜ滅ぶ」昴が低く問う。
「玉響の宮が、あれが託宣で告げておった。
この国をおおう凶雲が、畏の卦(かしこみのけ)が晴れぬと。このままでは国が危ういと。
だが、玉響の力をもってしても、その正体をつかむことはできなんだ。
ならば、ならば、いっそ———・・」
懊悩に身をよじる院を、三人はしばし無言で見つめる。
上皇の院として崇め奉られるそのひとの、浅ましく見下げ果てたその姿を。
愚かな、その言葉が珀斗の口からもれた。
院ともあろう御方に口にするに、最も礼を失した言葉。
とうに心の中では訣別していたとしても、蘇芳と昴にとっては実の父だ。
珀斗にとっては叔父。青波は上皇の猶子として、皇籍に名を連ねた。
「玉響の宮様はおそらくは気づいておられた。だからこそお苦しみになり、命まで縮められてしまわれたのでしょう」
珀斗が口をひらく。
「畏の卦(かしこみのけ)はあなた御自身だ」
そう告げる珀斗の目から、光るものが流れおち頬をつたった。
院がうなるように言葉を発する。死に瀕した獣が最後の力をふりしぼるがごとき声。
「この国は滅ぶ。我が一族とともに。滅ぶならば、我が手で終わらせる」
「なぜ滅ぶ」昴が低く問う。
「玉響の宮が、あれが託宣で告げておった。
この国をおおう凶雲が、畏の卦(かしこみのけ)が晴れぬと。このままでは国が危ういと。
だが、玉響の力をもってしても、その正体をつかむことはできなんだ。
ならば、ならば、いっそ———・・」
懊悩に身をよじる院を、三人はしばし無言で見つめる。
上皇の院として崇め奉られるそのひとの、浅ましく見下げ果てたその姿を。
愚かな、その言葉が珀斗の口からもれた。
院ともあろう御方に口にするに、最も礼を失した言葉。
とうに心の中では訣別していたとしても、蘇芳と昴にとっては実の父だ。
珀斗にとっては叔父。青波は上皇の猶子として、皇籍に名を連ねた。
「玉響の宮様はおそらくは気づいておられた。だからこそお苦しみになり、命まで縮められてしまわれたのでしょう」
珀斗が口をひらく。
「畏の卦(かしこみのけ)はあなた御自身だ」
そう告げる珀斗の目から、光るものが流れおち頬をつたった。