籠のなかの小鳥は


珀斗は目を開き、つかの間のもの思いから覚める。

時が止まり凍りついてしまったようだ。身動く者も、言葉を発する者もない。


あとは打ち合わせどおりに———


開け放たれたままの扉から、大極楽殿に入ってくるものがある。
色を失い、足をよろめかせて。着座もせずに、その場で平伏した。

「兵部卿より申し上げまする!」
悲壮な響きを帯びた声で叫ぶ。

「西国から早馬にて報せあり、砦が陥落したとの由」


うっ、と喉を握りつぶされたような声が、そこここで漏れた。

いつか来るのではと危惧していた事態ではあるが。
眼前につきつけられる現実の重さが、参議を打ちのめす。

なにに依れば、誰を信じればいいのか、立っている足の下が底なし泥と化してしまう心もとなさ。
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