籠のなかの小鳥は
「上皇ともあろう御方が売国の罪を犯され・・・この後は、配流にて永の蟄居となりましょうが。
民の心は離れかけております。民の信望を失えば、もはや大和朝は続きませぬ。

番の一族は国賊に堕とされ、夷狄に攻め落とされるまでもなく、内乱にて滅びまする」


大和朝の滅亡。

それがどんな事態を引き起こすか、小鳥にも想像がつく。

新たに覇者にならんとする貴族や各地の豪族の台頭。
内乱に乗じて侵略をもくろむ夷狄の存在。

乱世。力あるものが弱いものを虐げる、弱肉強食の世。

ふたたび秩序や安寧を取り戻すには、何十年、いや何百年とかかるかもしれない。

そうさせてはならない。

けれど、そのためには————


「四皇子様が自ら総大将として軍を率い、戦に勝利しなければなりません。
民の心と、この国の安寧を取り戻すために」


それが、日嗣の皇子たる彼らに課せられた使命。

昂然と顔をあげ、嶮しい道を歩む彼らの姿が見える。

常寧殿で女房たちに囲まれてこうして座っているだけの自分との、なんという違い。

体を折り曲げ、畳に手をついて突っ伏す。己の無力さを呪いながら。
背のなかほどまで伸びた髪が、さやさやと畳にこぼれ落ちた。
< 213 / 247 >

この作品をシェア

pagetop