籠のなかの小鳥は



三人の皇子たちからは、それぞれしばしの無沙汰をつげる長い文が届いた。

残る一人———

密かに願い、待ちこがれていたそのひとの訪いは唐突で、ごく短いものだった。


緋の衣が、燃え立つように鮮やかに御簾の向こうからあらわれる。

「ここでよい。あまり刻がないのでな」
立ったまま、そう告げる。

変わることのない、自信に満ちた物言いとその表情。そこに今は、風格さえただよわせて。

「明後日、紫野の地より出立する。しばし寂しい思いをさせるな」


手をそろえて畳につき、彼を見上げる。言われずともその姿がもの語る。
この人こそ、天下に立つものであると。

「———ご武運を」
万感の想いをこめて口にする。


蘇芳が不敵に口の端をつりあげる。
「運などいらん。勝利は我が手でつかむ」

この人らしい。

ただこれは持ってゆく、と彼が懐に手を入れ、なにかを取り出した。
開いた手のひらに乗っている、赤い祈り鶴。
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