籠のなかの小鳥は
そんなことは——・・・

言おうとして言葉にならず、肩をつかまれ身がすくむ。


「———ッ・・・ぁっ・・・」

痛みではない。畳に押し倒された衝撃が、身体を走り抜ける。
驚きと、混乱と————恐怖と。


このまま、と小鳥におおいかぶさって蘇芳が低く告げる。

「帳台の帳(とばり)の奥に、連れていってしまおうか」

「ご、ご冗談を・・」
絞り出す声が、ふるえている。


「冗談は好かん」
言い捨てて、黒仙花をすっと髪から抜き取った。

ぐしゃりと彼の手の中で、花が潰れる。芳香がいっそう強くなる。
むせかえるような濃厚な香りの中で、小鳥は顔をよじる。


「誰か・・・だれか、」
この人を止めて。
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