籠のなかの小鳥は
「分からないやつだな、女房を呼ぼうなど」

ぽい、と畳にひしゃげた花を放る。

最上位のかづらであっても、しょせんは従三位の一介の女官にすぎない。日嗣の皇子たる蘇芳が小鳥になにをしようと、手出し口出しはできないのだ。

そんな———

「いっ、いやあぁっ!」
考えるより先に、体が跳ねた。

エビのように体を反らして暴れ、相手を全力で突き飛ばす。必死で体を起こして立ち上がり、距離をとる。


「ぁ・・」
すべては一瞬のことで、気づけば蘇芳を見下ろしていた。

畳に尻もちの格好で背に手をついて、あっけにとられたように、こちらを見上げている。


どうしよう、どうすれば・・・

日嗣の皇子に無礼を働いたら、どうなってしまうのだろう。
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