籠のなかの小鳥は
小鳥も、几帳の陰に控える女房たちも凍りついたように動けずにいるなか、蘇芳がゆるゆると体を起こした。
緩慢な動作で、あぐらを組む。


俺の——、ふいと視線を外してつぶやく。
「俺の意に添わない女ははじめてだ」


この国の趨勢をになう日嗣の皇子、赤の宮様と称されるその人に。
たわむれに伸ばされた手であっても、拒む女性などいるはずがない。


「お許しあそばして」「おやめになって」などと口にしても、それはいわば行為の一環。
承知の上でのやりとりだ。
やすやすと体を預けるのは “はしたない” ことだから。


そもそもこの国の姫様方は、非常に非力なのである。
一日中、御簾の奥に座りっきり。足腰は萎えて、歩くのがやっとというありさまだ。

男性にあらがうなど、物理的に不可能なわけで。
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