籠のなかの小鳥は
週に三回は体育の授業を受け、マラソン大会となれば10キロ走らされてきた小鳥とは、体力に大人と子供ほどの差がある。


拒絶に遭い、あまつさえ突き飛ばされた蘇芳は、あらゆる意味で吃驚仰天の心境だろう。
怒りすら通り越してしまったようだ。


「これが異界の倣いなのか?」
膝にひじをついて問う。


「わたしは力が強くて・・・」
ちぐはぐな受け答えになってしまう。

「たやすく我が手にはまつろわぬ、か」


それも一興、言い置いて蘇芳が去ってゆく。


後には立ち尽くす小鳥と、萎れてなお芳香を放つ黒仙花だけが残された。
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