籠のなかの小鳥は
第三章/忘れ撫子
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大和 卯月五日——
大内裏朝堂院 大極楽殿 朝政———
「———兵部卿より申し上げまする」
「いかに」
「おそれながら、西国の戦況は日に日に混迷をきわめ、物資人員ともに乏しく、国境沿いの集落には壊滅させられたところが幾つも。家を捨てて逃げ出す民は、都へも流れ込もうという有り様です。
国の司から、中央へ軍の要請が届いておりまする」
「西方の夷狄(いてき)が、我が国と対等な外交を拒み、小競り合いをしかけてくるのは常のこと。
それがために、西国の衛りには多くの租税を割いている。
なぜそのような無様な事態を招くにいたる」
左大臣、長伴 逆が、肉に埋もれた細い目で兵部卿をねめつける。
兵部卿が、板の間に暗い視線をおとす。
大和 卯月五日——
大内裏朝堂院 大極楽殿 朝政———
「———兵部卿より申し上げまする」
「いかに」
「おそれながら、西国の戦況は日に日に混迷をきわめ、物資人員ともに乏しく、国境沿いの集落には壊滅させられたところが幾つも。家を捨てて逃げ出す民は、都へも流れ込もうという有り様です。
国の司から、中央へ軍の要請が届いておりまする」
「西方の夷狄(いてき)が、我が国と対等な外交を拒み、小競り合いをしかけてくるのは常のこと。
それがために、西国の衛りには多くの租税を割いている。
なぜそのような無様な事態を招くにいたる」
左大臣、長伴 逆が、肉に埋もれた細い目で兵部卿をねめつける。
兵部卿が、板の間に暗い視線をおとす。