籠のなかの小鳥は



その日嗣の皇女はといえば、目下、書の手習いに励んでいた。
鉛筆もシャーペンもマジックもない。筆記用具はもちろん筆と墨。

書道は得意なほうと思っていたけれど、日常となると勝手がちがう。
いつまでもかづらの代筆に頼っていられないと、文机にむかっては墨をする。


お手本を写してみたり、かづらや珀斗から教えてもらったこの国のあれこれを、頭の整理をかねて書き出してみたり。


政治のことまで質問をする小鳥に珀斗は「皇女は利発な性質でいらっしゃる」と目を丸くしながら、丁寧に教えてくれた。

元いた国では、女性も男性と同じように学問を修めておりましたと話すと、ひどく驚いていた。

そう、あたり前だと思っていた、学校へ行き教育を受ける権利が、この国の女性にはない。


そのあたり前がないからだろうか。衣食住がどんなに満ち足りていても、ふつふつとわき上がってくる望みがある。
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