i wish i could FLY


アレンは奈緒美の店で、ひたすら暴れまわった。大人が癇癪を起こすとこうなるのかと、怯えながらも冷めた頭で奈緒美は思った。

予約の時間になり、店に入ってきたアレンと二人きりになって、店で三番目に高い部屋に引きずりこまれた。この男はいつも性急に事を進めたがり、そのくせ長々と奈緒美をいじくりまわすのだ。そしていつもの手順で奈緒美をドアに押し付けきつく抱き締めた後すぐ。

奈緒美としては本当に迂闊だったとしか言いようがない。前日に付けられた二の腕の赤い痕を消してくるのを忘れたのだ。それが、奈緒美の体を割り開こうとしたアレンから丸見えだった。

ちょうど店用の赤いドレスはノースリーブで、腕はさらけ出されていた。アレンは吠えた。なんだこれはと憤慨した。そして綺麗に並べられていた調度品を手当たり次第床に叩きつけ始めたのだ。三番目にいい部屋である。それなりに高級な雰囲気を醸し出すべく、装飾品は多分にあった。

様子がおかしい事にスタッフがやっと気付き、駆けつけてきたときには個室の様子は散々だった。
粉々になった花瓶にティーカップ。戸棚のガラスは粉砕されて、中の陶器は無惨にも原型を留めているものは無かった。壁にかかっていた絵は折られ、壁紙には引っ掻いたような痕が残った。怯えて震えていた奈緒美が見る先には、唸りながら壁に頭を押し付けているアレンがいた。
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