ラブゲーム
 俺と桜井さんは、初めの内はぎこちなかったが、次第にいい感じになって話が弾んだ。たぶんアルコールの力だと思うけれども。

 桜井さんはやはり毒舌気味だが、思っていたよりはるかに気さくで、良い意味で同性と喋っているようだった。

「桜井さんって、実家に住んでるんですか?」

「そうだけど、いいかげん敬語使うのやめてくれない?」

「あ、そうですよね、じゃなくて……そうだね」

「三浦君は?」

「え?」

「三浦君も実家?」

「ううん、俺はアパート。実家は東北の田舎町なんだ」

 実家は東北の片田舎で、小さな病院を経営している。俺は次男だから自由にさせてもらい、東京の大学に進学して、同時にアパートで一人暮らしを始めたんだ。

「へえー、羨ましい」

「そんな事ないって。家事やら何やら大変だよ」

「それでも羨ましい」

「そうかなあ。桜井さんは独立したいの?」

「う、うん」

「実家は窮屈?」

 って言ったら、なぜか桜井さんは目を大きく見開いた。俺、変な事を言ったのかな。

 その時改めて思ったが、桜井さんの目って、眼鏡越しだから気づくのが遅れたが、すごく綺麗だった。やや黒目がちで、ジッと見てると吸い込まれそうだ。

「桜井さんって、兄弟はいるの?」

 話題を少しずらす意図で、そう聞いてみたのだが……

「いないわ。家の事は、聞かないでくれる?」

 と、言われてしまった。
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