ラブゲーム
「触ってもいい?」

「うん、いいよ」

 ふゆみさんは、細い指先で俺の胸とか腹とかを、ムニムニって感じで押してきた。俺はくすぐったくて、体をよじらせたりした。

「三浦君って意外に筋肉質なんだね? 何かスポーツしてるの?」

「今は全然だけど、学生の時は水泳をやってた」

「ふーん、そうなんだ?」

「ふゆみさんは?」

「私は何も……」

「勉強一筋?」

「……うん」

 ふゆみさんの表情が急に曇ってしまった。俺、地雷踏んじゃったのかも。

「あのさ、"ふゆみ"って呼んでもいいかな?」

 話題を変えるつもりで言ってみた。実際、そう呼びたかったし。

「いいけど、私も"裕くん"って呼んでいい?」

「"裕くん"?」

「ダメかな?」

「いいよ。ふゆみ」

 正直に言えば、"裕くん"なんて、ガキっぽくて嫌だった。子どもの頃を思い出すし。でも……

「うれしい。ありがとう」

 それでふゆみが喜んでくれるなら、いいかなと思った。

「裕くんって、優しいね。だい……」

 ん?

 "だい"でふゆみは言葉を切ったけど、その続きは何なんだ?

 ま、それはともかく……

「そろそろお喋りは終わり。優しい"裕くん"も休業」

 俺はそう言い、ふゆみの上にのしかかった。

「キスしてもいいかい? ふゆみ……」
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