ラブゲーム
「…………え?」

 俺が唖然としていると、

「いきなりのど直球だな」

 と田所は言い、苦笑いを顔に浮かべた。

 もし俺が女なら、今頃はめそめそ泣きだしているかもしれない。それほどに、速水の言い方はきつかった。実際のところ、俺は鋭利な刃物で胸をグサッと刺されたような、そんな気がした。

 だが、なんでそんな言われ方をされないといけないのか。次の瞬間には怒りが込み上げた。

「な、なんだよ、いきなり……」

「桜井さんの件です」

「うっ」

 速水の口からふゆみの名が出て、俺は言葉に詰まってしまった。速水の話がふゆみに関する事なのは想定内なのだが、実際に彼女の名前を耳にすると、途端に悲しみが他の感情を飲み込んでしまう、そんな感じがした。

 下を向き、涙を堪えていたら、

「三浦君。なぜ僕が”ラブゲーム”などという、陳腐な提案をしたのか、君は知っていますか?」

 と、速水は言った。

「いや、それは……」

 それが分からないから、速水をとっちめようと思ったわけで……

「桜井女史が、こいつを好きだからー」

はあ? 何言ってんだ、こいつは……

 田所が、チコちゃんみたいな言い方でボソッと言い、俺は呆れて田所を見た。田所は、今の失言を悔いたのか、速水に向かって「すまん」と頭を下げた。ところが……

「正解です」

 と、速水は言った。
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