ラブゲーム
「そしていつからか、桜井さんは三浦を好きになっていました」

 俺は耳で田所の話を聞きながら、目は速水の様子を伺うようにしたが、この話も当たっているらしい。

「しかし、桜井さんは気が弱く、しかもうぶだし、三浦はいつも女をはべらせているので、気持ちを伝える勇気は出ませんでした」

「お、俺がいつ女を……」

 と抗議をしかけたのだが、またもや速水に手で制されてしまった。ちなみに速水の”適時訂正”というのはなかった。今のは絶対、嘘なのにな。

「桜井さんは、遠くから三浦を見るだけで我慢しようと思いました。時々、同期会で側にいられたら、それだけで満足できると思っていました。この秋頃までは」

 おいおい。やけに具体的だが、さすがにそれはハズレだろう。と思ったのだが、速水は大きく頷いていた。田所、おまえすごいな!

「ところが、状況が変わりました。桜井さんには、時間が無くなったのです」

 今のは曖昧だなあ。どんな状況で、何の時間が無くなったんだよ?

 速水の”適時訂正”はなかったから、ハズレではなさそうだが……

「焦った桜井さんは、会社で唯一相談できる、同僚の速水に打ち明ける事にしました」

 今度は具体的だが、速水は無音で拍手したから、たぶん大当たりなのだと思う。

「相談を受けた速水は考えました」

 おい。本人の前で推理するのかよ。さすがの速水も、目を丸くしていた。
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