ラブゲーム
「普通に桜井さんに助言したり、背中を押したりでは時間が掛かり過ぎる。そもそも、女の告白を断り続ける三浦が相手では、あっけなく断られる可能性が高い」

「ちょっ……」

 俺は抗議しかけてすぐにやめた。どうせ速水に止められるから。ちなみに気色わるい”ですます調”をやめたようだが、もちろんスルーだ。

 それにしても、”断り続ける”って何だよ。俺が女の誘いを断った事なんて、せいぜい10回ぐらいしかないぞ?

「そこで速水は発想を変えた。桜井さんからではなく、三浦から桜井さんへ接近させようと。桜井さんはイメージで損をしているが、良く見れば美人だし可愛いし、口は悪いが性格はいいから、さすがの三浦もそれに気づき、恋に落ちるかもしれない」

 大当たりだよ、田所。俺はしっかり落ちたよ、ふゆみに……

 ん? この場合、大当たりは速水か? ややこしいなあ。

「そこで閃いたのが”ラブゲーム”だ。男の闘争心と、三浦の単純さを利用したうまい手段だった」

 はいはい、どうせ俺は単純ですよ。

「桜井さんと相談して、期限は3ヶ月にした。それが桜井さんの、ギリギリの期限だった」

「当初はね」

 あ。初めて速水の”適時訂正”が入った。意味はさっぱり解らないけど。
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