ラブゲーム
「新聞社でも、様々な仕事があるんだよ。ふゆみだって、新聞には関係のない経理をしてるだろ?」

 さすがに父親はわかってるようだな。世間の事を。

「あらま。確かに、そうよね?」

「おまえは本当に、世間知らずだね」

「すみませんね」

 と母親は言い、口に手を当てて「おほほほ」と笑えば、父親もまた、「ふふふ」と笑ったりして、俺は心の中で、盛大なため息をついた。

 なんか、この人たちは、俺たちとは別の次元で生きてるのかもしれない。そう本気で思ってしまった。

 肝心のふゆみの話をしたいのだが、どのタイミングで話しだせば良いのか、そもそも俺の方から話し始めて良いのかどうか、判断しかねていると、コンコンとドアがノックされた。

 ふゆみが来たのかと思ってドアの方を見たら、黒い服を着た女性がドアを開けて入ってきた。それは、人生で初めて見る、本物のメイドさんだった。

 歳は俺たちより少し上か。黒髪が艶やかで、かなり美人なメイドさんが、物静かな所作でお茶を置いてくれるのを見て、ふゆみに雰囲気が似ているなと思った。

 そう言えば、ふゆみは両親のどちらに似たのだろうか。両親はどちらもスマートに見えるが、ふゆみのようにモデルさながら、とは言い難い。

 顔は、強いて言えば母親の方が近いと思うが、似ている、というほどではないと思う。
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