ラブゲーム
「ふゆみ。コンタクトはやめたのか?」

 という事だった。コンタクトは目に合わなかったんだろう、と思ったが、念のため聞いてみた。

「裕くんは、どっちがいい?」

「と言うと?」

「眼鏡を掛けた私と、掛けてない私」

「ん……どっちのふゆみも好きだけど、強いて言えば、掛けてない方かな」

「やっぱりね。じゃあ、外しちゃおっと」

 横目でチラッと見たら、ふゆみは本当に眼鏡を外していた。

「おい、眼鏡外したら、見えないんじゃないか?」

「大丈夫。この眼鏡は素通しだから。本当はコンタクト付けてるの」

「なんでまた、そんな事を……?」

「ん? 細やかな抵抗」

「ふーん、そっか」

 なんか、分かった気がした。ふゆみの気持ちが。神徳との話を蒸し返したくないから、言わないけれども。

「あ、そうだ!」

「なんだ? どうした?」

「裕くんに聞きたい事が、まだあった」

「今度は、何?」

「裕くんは、父や母とどんな話をしたの? 私たちが行く前」

「ん? 大した話はしてないよ」

「いいから言って。気になるから」

「分かった。えっと、何を話したっけかなあ……」

 今朝、桜井邸を訪れたところまで、俺は記憶を遡った。そしてふゆみの両親に会い、交わした会話を思い起こしたのだが、

「あっ」
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