普通なお嬢様の極秘恋愛
「ちょっと凛、本当に大丈夫?
やっぱりおかしいわよ?」

お母さんが、クッキーに伸ばした手を引っ込めて、眉を八の字にした。

「大丈夫……。
ちょっと、考え事してて……。
まだ、慣れない、の……」

心配そうなお母さんに、大丈夫だよ、と笑顔を浮かべて見せた。
それもきっと、力ない表情だったのか、それとも困ったようなものだったのか……。
お母さんはやっぱり心配そうだった。

「そう……。
そうよね、慣れない生活がね……」

そのセリフは、初めての高校生活で、ではなく、変わってしまったお父様とこの生活がね、と、暗に言っているのをわたしは知っている。

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