普通なお嬢様の極秘恋愛
威厳のある声の方向に目をやると、そこにはお父様が開け放たれた扉の真ん中で、不機嫌そうに腕を組んで立っていた。

「あ、あなた……。
お帰り、なさいませ……」

お母さんが立ち上がって、一礼する。
わたしもそれに習って席を立ち、頭を下げた。

「旦那様、お帰りなさいませ」

翔護もわたしからお父様に向きをかえ、扉の脇の田中さんも、お父様から受け取ったコートを大事そうに抱えながら、頭を下げている。

「良い。田中、森下、下がれ。
すみれ、凛、座りなさい」

「失礼、致します」

2人は静かに出て行ってしまって、残されたのはわたし達3人。
わたしは仕方なく、言われるがままに席についた。
お父様の前では、ぴんと背筋も伸びる。
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