普通なお嬢様の極秘恋愛
目をこすってこちらを見上げる瞳が、すっごく眠そう。

用心深い翔護がお屋敷の廊下でわたしの名前を呼ぶくらいだ。
きっと寝ぼけているんだろう。

「翔護、入って?」

「ん……」

わたしは周囲に誰もいないことを確認して、翔護を小声で部屋に招き入れた。

「翔護、どうして廊下で寝てたの?」

「凛が、心配だったから。
出てくるまで待ってようと思って、それで……」

まだ寝ぼけているのか、翔護はぼんやりとした視線でわたしを見つめて、それから抱きしめていたわたしのカバンをそっと床において、それからわたしを抱きしめた。

「しょ、翔護……。
ちょっとここで待っててね?
お水とってくるから」

わたしは名残惜しいぬくもりを剥がし、ベッドに翔護を座らせてそっと部屋を出た。
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