普通なお嬢様の極秘恋愛
「後ろの方だけ、聞いたみたいだね」

翔護がくすくす笑っている。

「まぁでも凛が好きなのは本当だし、否定することもないかな」

翔護は目が合ったおじいさんに小さく会釈をしながら微笑んで、お隣どうぞ、とおじいさんにベンチに座るように勧めた。

それからバスに揺られて、バスを降りて、長い坂道をのんびり歩いてあがった。

やっと着いたその場所は、昔話に出てきそうな日本家屋。

おじいさんはわたし達より先のバス亭で降りていった。
「若いの、達者でな~」
と、バスを降りる際合図をしてくれた。

すっかり暗くなってしまった周囲に、その建物から漏れるオレンジの優しい光が温かい。

「凛、今日はこの旅館に泊まるの?
予約とか、大丈夫?」

「多分、大丈夫だと思う……」
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