普通なお嬢様の極秘恋愛
わたしは咄嗟に大女将、と口にした。

「え? 大女将のお客様ですか?」

まさかこんな若い2人が大女将のお客様……?
とでも言いたげに、女性は訝しげな表情を一瞬浮かべたあと、ハッとしたように笑顔を貼り付けた。

「本日大奥様にお客様だとは伺っておりませんで……。
お約束はされていらっしゃるのでしょうか?
どういったご用件でしょうか?」

「えっと、約束は、してないんですけど……」

「では、失礼致します」

着物の女性はわたしを不審だとでも思ったのか、一礼して背を向けて歩き出してしまった。

「あ、あの……!
凛が来た、と伝えてもらえれば、通じます!
どうか、お願いします」

慌てたわたしの声に、ちらりと振り向いた女性は引き戸を引いて建物の中へと入って行った。
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