普通なお嬢様の極秘恋愛
「お客さん、つきましたよ」

タクシーが停車し、運転手に声をかけられた。
朝早かったからかウトウトしていたわたしは、一気に目が覚めた。

「わ、着いた?!」

明け方の空。きらめく海。
磯の香りがする、浜辺の旅館の前。

「わぁっ……!」

わたしは歓声を上げた。
なんて綺麗な海、なんて趣のある旅館!

「ほら凛、行くよ?」

じっと座り込んだまま窓の外を眺め続けるわたしを、翔護が笑いながら手を差し伸べて外に出してくれた。

いつの間にか会計も終わっていたらしい。
わたし達はカバン片手に、旅館へと入って言った。

「あ、来た来た。上間さん、森下君」

「あれ……?
どうしてここに?」
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