普通なお嬢様の極秘恋愛
「そりゃあ、ワケでもないと、こんな山奥の旅館にわざわざバイトしに来ないよな……。

大丈夫、俺らから二人のことがバレたりしないから。な、優斗」

「ああ、まぁな。
森下、だっけ? 
じゃ、黙っとくってことで、一つ貸しな」

お兄さんに同意を求められた同級生の弟さんは、いたずらっこのようににかりと笑った。

「ま、優斗ったら貸しだなんて!
図々しいのねっ」

瀬田さんが弟さんのおでこをぺちりと叩いた。
そんな母子のやりとりを見ていると、張り詰めていた気持ちがほぐれて、力が抜けていくのを感じた。

「よ、よかったぁ……。
翔護、良い人達に恵まれて、本当に良かったね……・
わたし、頑張る……」

「ちょっ……!!
凛?! りんっっ!!」

近いようで遠いような……。
翔護がわたしを呼ぶ声を聞きながら、わたしの意識はどんどんと薄れていった……。
< 316 / 428 >

この作品をシェア

pagetop