普通なお嬢様の極秘恋愛
その前に翔護……。
本当にお父様と行っちゃったんだ……。

悲しくて、また溢れそうになる涙をどうにか堪える。

「え?」

「ついてきた……?」

瀬田さんもお兄さんも、驚いた顔をしている。

「お嬢様、お嬢様っ」

「ご無事ですか?
お嬢様ぁ!」

小さく声をかけながら、控えめに、だけど急ぎ足でやってくる音が聞こえる。

ああ、この声は……。
そんなに経っていないはずなのに、懐かしく思える。

「ああ、来ちゃったか……。
俺としたことが、見つかった」

弟さんは、ごめん、とわたしに両手を合わせている。
わたしはブンブン首を横に振って、苦笑いを浮かべた。
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